営業ノウハウ
公開日 : 2022.07.15
最終更新日 : 2023.03.07
OEMで得られる効果とは?事業を進めるポイントを解説
製品を新たに製造や増産する際に、OEMという手段を取るケースがあります。製造を他社に依頼する手段で、自動車や食品業界、アパレル等導入している産業は多く存在します。OEMを導入してみたいけれど、具体的な概要や効果が分からないという人も少なくありません。効果的にOEMを取り入れるためには、しっかりと把握することが大切です。今回は、OEMで得られる効果や事業を進めるポイントを詳しく解説します。目次
[open]
OEMはどのような課題に効果的なのか

OEMを活用している業界とは
OEMを活用している業界は多岐に渡ります。主な業界として「コンビニ」「化粧品」「アパレル」「自動車」「家電」が挙げられますので、それぞれの業界におけるOEMの活用について解説します。コンビニ名を冠したOEM商品
コンビニや大手スーパーマーケットでよく見かけるプライベートブランドの製品も、OEM のひとつです。基本的に、コンビニやスーパーマーケットは小売店であり、自社で製造ラインを持っていません。そこで、OEMを生産する企業に依頼して、各製品を製造しています。こうした小売店のプライベートブランドは、大量発注をしたり製造ラインの空き時間を活用したりといった工夫から、一般の製品よりもリーズナブルです。また、小売店側のメリットとしては、商品購入後に消費者の自宅でもブランド名を理解してもらえますし、小売店としての顧客満足度の向上に期待できます。化粧品業界のOEM
化粧品業界も、OEMが盛んに導入されています。例えば、食品業界や酒造メーカー等の異業種が化粧品を製造する際に使うのがOEMです。本業で培ったノウハウと化粧品を組み合わせることで、より魅力的な製品を作っています。しかし、多くの異業種は、化粧品に関するノウハウがありません。そこで、OEMを手がける会社とタッグを組み、両方の知識やスキルを使って製品開発を行います。よく商品のパッケージに「製造元」と「販売元」でそれぞれ別の企業名が記載されているかと思いますが、まさにそれがOEMのパターンです。アパレル業界のOEM
アパレル業界においても、OEMはなくてはならない製造手段です。企画や設計を自社で行い、製造や納品はOEMに委ねるケースが多く見られます。コストダウンを図り広く流通させる上で、OEMが重要な役割を果たします。また、OEMであれば小ロットに対応していることもあり、ブランドを立ち上げたばかりのデザイナーも活用できます。自動車業界のOEM
OEM といえば、自動車業界を思い浮かべる人も多いでしょう。国産車のほとんどがOEM を利用しています。別々のメーカーが同じ部品やボディを使い、エンブレムやフロントフェイス等の細部のデザインを変えて差別化し、別ブランドとして販売します。開発コストを削減できるだけではなく、OEM を提供する側も、工場稼働率が上がるメリットがあります。家電業界のOEM
家電業界では、OEM導入によりリーズナブルに販売される製品を「ジェネリック家電」と呼ぶことがあります。近年、家電量販店でもオリジナルブランドを目にするようになりました。こうしたアイテムは、OEMによって生産されており、手頃な価格で手に入れられます。また、スタイリッシュなデザインが人気の家電ブランドも、OEMを導入しているケースが多いでしょう。ODM・PBとの違い
OEMと似た製造方法として、ODMやPBが挙げられます。いずれも、コストを下げて広く流通させるために重宝する製造方法ですが、それぞれに特徴が異なります。続いては、ODM・PBとOEMの違いについて紹介します。ODM
ODMとは、Original Design Manufacturingの略称で、企画から設計まで全ての工程を生産会社に依頼する手段です。OEMの場合は、委託した側が主導権を持ち、基本的に製造だけを依頼します。しかし、ODMでは、受託した生産会社がブランディングやマーケティングに関わることも少なくありません。 業界に参入したばかりでノウハウが乏しい企業がODMを利用して製品を作ったり、ブランド力があるため販売に専念したりする場合に活用できます。PB
PBはPrivate Brandの略称で、主に小売業や流通業を営む企業が製造を依頼して、独自に展開していく製品です。OEMによく似ていますが、基本的に小売業がOEMを依頼して自社のブランド製品を流通させるケースをPBといいます。OEMのメリット
これだけ多くの産業でOEMが導入されている理由は、さまざまなメリットがあるからです。続いては、OEMによって得られるメリットについて細かく解説します。小資本で自社オリジナルブランドの商品が作れる

在庫を抱えるリスクが低い

製造にかかるコストの削減ができる

コア業務に集中できる

OEM製品ができるまでの流れ
OEM製品を作るためには、6つのステップを踏む必要があります。委託する企業としっかりと連携を取らなければ、質のよい製品に仕上がりません。まずはOEM製造を依頼する前に、6つのステップを把握しておきましょう。企画側と製造側が打ち合わせする
まずは、企画側と製造側で打ち合わせを行います。企画側が、製品のイメージや予算、必要数や納期等を伝える作業です。その上で、製造側がノウハウを踏まえて、より良い製品が作れるように提案します。小ロットで製品試作・チェックをする
打ち合わせた内容をもとに、製造側が小ロットで試作品を作ります。企画側は、提示された試作品をチェックし、問題があれば改良をする工程です。希望の仕様になるまで、繰り返し改良をするケースもあります。製造側とのすり合わせをする
最終的な形が決まったら、製造側と生産方法をすり合わせていきます。納期や品質、コストを踏まえて、企画とのズレがないように綿密な確認を行わなければなりません。製造に入る前の大切なステップです。稼働・生産開始
試作のチェック、工程のすり合わせが全て完了したら、いよいよ生産に入ります。無駄を抑えて効率的に進めるためには、稼働中も随時管理を行わなければなりません。打ち合わせ通りの品質や納期を踏まえた上で、作業を進めます。検品・品質チェックをする
完成した製品を検品します。指示通りに問題なく仕上がっているかをチェックする工程です。また、納品数についても確認する他、梱包に付着しているゴミや汚れも確認する必要があります。お客様に届ける前の大切な作業です。納品・販売開始
検品が完了した製品を、納品先に届けます。納品時にも、できるだけコストを抑えるように工夫をしなくてはなりません。また、配送中に破損するようなことがないように、納品先に届くまで慎重に行動する必要があります。納品後に、お客様の感想や意見を踏まえてブラッシュアップすることも大切です。OEMにもデメリットがある
非常に効率性が高く、発注側・製造側ともにメリットがあるOEMですが、デメリットもあります。どんなデメリットがあるかを把握しておくと、OEMを依頼する際に役立つでしょう。続いては、OEMのデメリットを3つ解説します。生産利益の向上が見込みにくい
自社でオリジナル製品を製造する場合は、効率化や努力を重ねることで生産利益が向上する可能性があります。一方、OEMでは製造会社とのすり合わせの上で製造していくため、生産利益が見込みにくい点がデメリットといえるでしょう。製造業者側が競合になる可能性もある
製造側である企業は企画や販売が苦手なことが多く、OEMの発注元にとってライバルになることはありません。しかし、長くOEM製造を続けていると、製造側にも企画や販売のノウハウがストックされます。製造側が自社製品を販売することになれば、発注側にとっての競合になる可能性も考えられるでしょう。自社工場のスキルが育ちにくい
自社ブランドの製造をOEMに依存し続けていると、自社工場でスキルが育ちにくいデメリットがあります。OEMで依頼する範囲が広ければ広いほど、スキルやノウハウが得られない状態になるでしょう。一方で、発注側に技術力があれば、OEMの製造側のスキルを学んで自社工場に生かすことも可能です。OEM関連事業を成功させるポイント
OEMは、効率的に自社ブランドの製品を流通させる上で、非常に便利な手段です。しかし、ポイントを押さえてOEMを導入しなければ、失敗に終わる可能性も否めません。続いては、OEM関連事業を成功させるためのポイントを解説します。製品のリサーチを行う
自社ブランドを作る上で大切なのは、製品のリサーチです。他社の製品をリサーチするだけではなく、生産にかかるコストや利益率に関してもしっかりと確認しておきましょう。リサーチを丁寧に行えば、生産に入る前の段階から問題点が見えてくることもあります。早い段階で解決すれば、スムーズにOEM製品を生産できるでしょう。製造会社を吟味する
OEM製造に対応している製造会社はたくさんあります。それぞれに特徴が異なり、生産ロットやコストも違うため、しっかりと比較して選ぶことが大切です。OEM製造会社の展示会を訪れて、自分の目で製品を確かめるのもよいでしょう。また、日本だけではなく海外に視野を広げてみるのもおすすめです。製品を紹介・拡販を目的としたコンテンツを作る
OEM製品が完成したら、ユーザーに届けなければなりません。単純に、製品ができただけでは周知できないため、製品を紹介するためのコンテンツを作りましょう。自社サイトの中に製品紹介ページを作ることも大切です。また、SNSや広告を活用して、広く拡散する必要もあるでしょう。OEM製品の製造をしてもらう会社を選ぶコツ
数あるOEM製造会社の中から、最適な会社を選ぶためにはコツを押さえる必要があります。闇雲に選んでしまうと、後になってトラブルにもなりかねません。続いては、OEM製造会社の選び方について4つのコツを解説します。製造が可能な品目を調べる
OEM製造会社によっては、希望する製品には対応していないというケースも考えられます。ジャンルだけを見て選ぶのではなく、対応している製品を細かく調査することが大切です。製造ロット数を確認する
OEM製造会社の中には、小ロットに対応していないところもあります。知らずに依頼してしまうと、たくさんの在庫を抱えることになりかねません。事前に、最小ロットを確認した上で依頼するようにしましょう。製造会社の技術レベルや品質管理体制等をチェックする
OEM製造会社によって、技術レベルや品質管理体制が異なります。どんな製品でも、品質が悪ければ顧客を確保することができません。製造会社を選ぶ際には、どの程度の技術レベルがあるか、品質管理体制はどうなっているかを確認しておきましょう。納期の期間について問い合わせる
OEM製造会社を選ぶ際には、納期について確認しておかなければなりません。特に、初めて利用する際は、発注から納品までの間に、サンプル作成やチェックの工程を挟みます。納期が定かになっていないと、販売計画にも影響してしまうでしょう。製造会社側にもメリットがある

利益が上がる
製造会社の中には、製造ラインや人員が余っているケースがあります。特に、大きな製造ラインを持っている会社は、活用しきれていない現実に頭を抱えているでしょう。そこで、OEMを受託すれば、こうした無駄な製造能力を活用できるため利益が上がります。製品企画や製造スキルのノウハウが得られる
製造会社の多くは、製品企画や販売に関するノウハウがありません。OEMを受注し、委託者とタッグを組むことで、これまで得られなかったスキルが身につきます。また、委託側の方が高度なスキルを持っているケースもあるでしょう。その場合は、委託側から指導を受け、製造スキルの向上が図れます。デメリットについても要チェック
OEMは製造会社側にもメリットがありますが、デメリットもあるためチェックしておきましょう。しっかりと把握できておけば、万が一の時にも対処できます。製造会社側のデメリットは以下の通りです。売上が不安定になりやすい
OEM製品は、委託側が主導権を握ります。そのため、売上に関しても委託側の意向が影響し、自社で管理することができません。毎月の生産量が一定とは限らないため、売上が不安定になりやすい点はデメリットといえます。自社ブランドの認知がされづらい
OEMを製造する会社は、あくまでも裏方に徹している状態です。ブランド名は委託側にあるため、高いスキルを持ち高品質な製品を作ったとしても、製造側が認知されづらいデメリットがあります。製品を売り込むには営業スキルが必要
OEM製品の依頼をしてもらうためには、発注側に技術や製品を知ってもらわなければなりません。そのためには、営業スキルが必要です。しかし、長く製造業に徹していた企業は、営業スキルが乏しいこともあるでしょう。製造会社側が進めておきたい対策

体裁を整えた契約書で委託側と契約する
OEM製品を作る上で必要となるのが、OEM契約です。発注側のブランドを、製造会社側が製作し、仕上がった製品に発注側のロゴや商標を付けて販売することを約束します。OEM契約には、最低ロット数や納期、仕様、責任の所在についても触れておかなければなりません。また、互いのノウハウを知ることになるため、秘密保持に関する契約も必要でしょう。OEM契約を結ぶ際には、体裁を整えた契約書を用意しておかなければなりません。OEM契約書の記載事項について
OEM契約書に記載する内容は以下の通りです。いずれも大変重要な項目のため、きちんと記載しましょう。- 取引内容
- 商標の使用
- 所有権と危険負担
- 知的財産権
- 守秘義務
- 検査
- 瑕疵担保責任