営業ノウハウ
公開日 : 2023.01.27
最終更新日 : 2023.06.22
リードナーチャリングによって受注率を上げるには
昨今、急速なインターネットの普及やコロナウイルスの影響に伴い、多くの企業が取り組んでいる「リードナーチャリング」についてご紹介します。効率的に売上を向上するためには、新規顧客の開拓だけではなく、過去にやり取りのあった見込み顧客へのアプローチは必要不可欠です。リードナーチャリングを取り入れることで、開拓しきれていなかった見込み顧客にアプローチをできるようになり、さらなる受注率の向上に繋がります。 今回は、リードナーチャリングが注目される背景やメリットなどをご紹介します。【目次】
リードナーチャリングとは
リードナーチャリングとは、有効な営業施策の一つで、直訳すると「見込み顧客の育成」です。見込み顧客とは、将来的に自社の顧客になりうる顧客のことを指します。当然ですが自社の商品を購入してもらえるかどうかの購入意欲は、顧客によって様々です。まだ商品やサービスの検討を始めた段階という顧客もいる一方で、すぐにでも導入したいと考えている顧客もいます。リードナーチャリングは、まだ商品やサービスの検討段階で止まっている見込み顧客に対し、購入意欲、検討確度を高め、購入に繋げていくことを目的とした施策です。 また顧客が商品やサービスを購入した後もメールなどを使い継続してコミュニケーションを取ることで、他の商品への購買意欲を上げていく目的も含まれています。リードナーチャリングが注目される背景
リードナーチャリングが日本で注目されはじめている背景には、下記の2点です。 ここからはそれぞれの背景について、解説していきます。インターネットの普及による顧客の情報取得の変化
昨今では企業のIT化などに伴い従業員1人につき、パソコンが1台支給されるのが当たり前になってきました。またテレワークの推進などにより、スマートフォンを支給している企業も増えてきています。 インターネットが普及する前、顧客は担当営業が持ってくる情報を頼りに検討をしていました。しかし昨今は、自らがインターネットを利用して商品やサービスに関する情報を探すようになってきています。つまり顧客は情報を「待つ」のではなく、「掴む」ことが容易になったのです。 顧客が様々な情報に触れるようになったため、自ら比較検討が行えるようになったことも大きな変化でしょう。顧客に対するアプローチもアナログによるものだけではなく、Web上でのアプローチやSNSでのアプローチなど、顧客の特性に合わせて行うことが求められるようになりました。休眠顧客の増加
休眠顧客とは、進行している取引などはないものの過去に商談をした顧客のことを指します。例えば、自社で開催した展示会やイベントに参加してくれたものの、案件化までには至っていない企業等もここに該当します。インターネットの普及に伴い、Web上でのアプローチやSNSでのアプローチから見込み顧客が増加した一方で、すべての顧客に対してアプローチをできていない企業も増加してきています。ですが、休眠顧客の中には、自社の商品を購入してくれる可能性の高い企業もあるため、継続したアプローチが求められます。それには、効率的な営業活動は欠かせません。リードナーチャリングの重要性
リードナーチャリングが重要な理由は「機会損失の防止」です。どんなに見込み顧客のリストが手元にあったとしても、企業の目的は売上を上げ、企業全体の成長に繋げることにあるからです。そのため見込み顧客に対して、適切なアプローチを行い、機会損失の防止を図ることで市場を勝ち抜くことに繋げます。データによれば、直近で購買検討に至る見込み顧客は25%とされており、ほとんどがすぐには購買行動を起こしません。しかし直近の購買行動はなくても、ここから2年以内に購買行動を起こす見込み顧客は80%に上るとされているのです。つまり、直近に購買検討がないという理由でアプローチを停止してしまうと、2年以内に80%もの機会損失に繋がってしまいます。こうした将来的な機会損失の防止のためにも、適切なアプローチの継続をするためにリードナーチャリングは企業にとって必要不可欠と言えるでしょう。リードナーチャリングのメリット
リードナーチャリングを行うメリットは主に下記の3点です。 それぞれのメリットについて解説していきます。営業活動の効率化
リードナーチャリングでは、見込み顧客に適切なアプローチをかけていきます。そのためには、自社で行った手法に対してデータを取り、受注確度を確認する必要があります。例えば、定期的にメルマガを配信している場合、まず開封率を確認します。開封率の高い顧客は関心度が高いということが推察されるので、関心度の高い顧客に対してはさらに積極的なアプローチをかけるのが得策です。このような方法で営業は確度の高い顧客に対して集中的にアプローチをかければ良いので、結果として効率的な営業活動にも繋がります。 さらに、ターゲットを絞った集中的な営業活動により、自社ブランドの向上や顧客の単価が上がることも期待できます。長期フォローの仕組みを組める
現在はインターネットの普及により、顧客情報を取得する環境の間口が広くなっています。あらゆる情報が取得しやすくなったため、従来と比べて顧客の情報収集期間も長くなってきました。こうした時代の変化に対応するため、顧客を長期的にフォローし続ける方法を考える必要があります。 リードナーチャリングは「見込み顧客の育成」を最適に行うことが目的なので、見込み顧客のニーズを捉えた提案を適切なタイミングで行う仕組みをつくることが可能です。自社の中でリードナーチャリングを仕組みとして作ることができれば、営業の勘などに頼る必要がなくなり、属人化するリスクも防ぐことができます。また長期間のフォローが求められるため、フォローアップ漏れをしてしまう見込み顧客が出てくることも防げるでしょう。資産の有効的な活用
新規の営業活動から見込み顧客を作るのも、コストや時間がかかります。しかしリードナーチャリングでは、休眠顧客を活用しての売上機会創出が期待できます。なぜならリードナーチャリングは、長期間に渡ってフォローを行うことを前提としているため、休眠顧客に対し適切なアプローチをかけることが可能だからです。休眠顧客は、案件化ができなかったとはいえ一度は自社の商品やサービスに関心を持ってもらった顧客です。新たな見込み顧客の獲得のためにコストをかけるよりも、今手元にある資産を有効的に活用できるので、コストの軽減にも繋がります。リードナーチャリングの具体的な手法
リードナーチャリングを行う具体的な手法は主に下記の4つです。 それぞれの手法について解説していきます。メールマガジンの配信
見込み顧客に対して定期的に最新情報をメールマガジンとして配信するのは、リードナーチャリングの代表的な手法です。顧客の特性や状況に合わせた内容のメールを配信する、セミナーの開催情報を配信するなど内容にも工夫ができます。また、顧客が展示会やイベントに参加したタイミングを起点として、段階的に送付される「ステップメール」なども有効的な手法です。
SNSの活用
TwitterやInstagram、Facebook、TikTokなど、現代でSNSは大きなマーケットを占めています。BtoCだけでなく、BtoBに向けた手法も多くの企業が行取り組んでいます。商品に関する情報発信はもちろんのこと、顧客からの質問、返信に対してコメントやダイレクトメッセージの機能を利用し、コミュニケーションを取るなど、接点が作りやすいのも特徴です。加えて拡散力も高いツールのため、一度でも認知が広まれば自社や商品、サービスに対しての認知度向上も期待できます。
オウンドメディアの運営
オウンドメディアとは自社で運営しているブログやサイトなどを指します。オウンドメディアで有益な情報を発信することで、自社のロイヤルティ向上にも繋がります。また昨今、Instagram等のSNSを利用して情報を探す人も増えており、オウンドメディアはSNSとの相性も良いと言えます。これらを組み合わせてリードナーチャリングを行なっている企業も多くあります。一方でオウンドメディアの運営は効果が出るまでに時間がかかる、SEOの知識やWebマーケティングの知見が必要になるなど、手間がかかってしまうのが難点です。しかしきちんと運営ができれば、リードナーチャリングにおいて大きな効果を発揮する手法でもあります。
セミナーや展示会の開催
セミナーや展示会の開催は、多くの企業が取り入れているリードナーチャリング手法の一つです。セミナーを開催することで、参加してくれた見込み顧客が高い確率で自社の商品やサービスに対して興味を持ってもらえることが可能になります。また参加してくれた顧客に対して、その場でコミュニケーションが取れる点も大きなメリットであると言えます。昨今では、コロナウイルスの影響で会場を押さえて開催するオフラインでのセミナーだけでなく、Webセミナーを開催する企業も増えてきています。そのため、遠方にいる見込み顧客に対してもアプローチができるなど、見込み顧客獲得の幅が広がっています。
リードナーチャリングの進め方
リードナーチャリングは以下の3つのステップで進めていくのが効果的です。 それぞれのステップでの進め方について解説していきます。見込み顧客の情報をまとめ、セグメントを分ける
まずは見込み顧客の情報をまとめていきましょう。例えばセミナー、イベントへの参加者や新規営業で獲得した担当者の名刺など、自社内にある見込み顧客の必要な情報を活用しやすい方法でまとめます。そしてまとめた見込み顧客の情報をもとに、セグメント分けをしていきます。セグメントとは区分を意味する用語で、現在の見込み顧客の状態に合わせて分けていくことです。例えば、「すでに購入を検討している段階」であるセグメントと「検討を始めたばかりで情報収集をしている段階」のセグメントに分けるなどしてみましょう。セグメントで分けることで、より効果的なアプローチがどのようなものになるのかが見えてきます。セグメントごとに適切なアプローチを行う
セグメント分けが完了したら、早速適切なアプローチを行なっていきます。リードナーチャリングは「見込み顧客の育成」を行なっていくものなので、自社の商品やサービスを購入してもらうために、今顧客がどのような情報を求めているかを推察する必要があります。そのためには購入や契約から逆算的に考え、戦略的にアプローチを行うことが大切です。各部署と連携し、購買に向けたクロージングを行う
見込み顧客とのアポイントが取れたら、各部署と連携しクロージングに向けて動いていきます。現在の見込み顧客の段階に応じて、情報を共有します。どのような情報を見込み顧客は持っているのか、どのような情報を欲しているのか、どのような見込み顧客なのかなどを共有します。成約に繋がる商談を行うためにも、連携は非常に重要です。リードナーチャリングの注意点
リードナーチャリングを行う注意点は「時間やコスト、リソースがかかる」ことが挙げられます。リードナーチャリングは、見込み顧客が多ければ多いほど情報が膨大になり、セグメント分けを行うのにも多くの時間が必要となります。加えてセグメント毎のコンテンツの作成や、実際の配信など行うことが多岐に渡るため、リソースがかかってしまうことも注意が必要です。もし、リードナーチャリングを行うツールを導入する場合は、コスト面でも費用対効果が取れているかの確認が必要です。リードナーチャリングは長期的に行う施策のため、効果が出るまで時間がかかることがほとんどです。そのため「時間やコスト、リソースがかかる」ことは認識をしておきましょう。リードナーチャリングの成功事例
リードナーチャリングの成功事例として「日本電気株式会社(NEC)」の事例を紹介します。NECでは製造業の顧客を対象に、BI(ビジネス・インテリジェンス)ソリューションの拡販を効果的に行うため、リードナーチャリングの施策を実施しました。NECが行なったリードナーチャリングの施策は下記の通りです。- 自社が運営するビジネス情報を掲載するウェブサイトから製造業関連の見込み顧客の属性を絞って抽出
- 抽出したリスト宛にメールを配信/ウェブサイト内で顧客が行ったアクションの履歴を取得
- 関心度の高い見込み顧客の抽出
- テレアポイント/営業担当者の訪問