ARの基礎知識
公開日 : 2021.08.27
最終更新日 : 2023.06.23
ARとVRの違いとは?技術や利用方法の違いを解説!
コンピューター処理を行って現実世界ではできない体験を提供する技術を、総称して「XR」と呼びます。そのXRの中でも知名度が高いのが、ARやVRと呼ばれる技術です。ARとVRは、テレビやニュースを通じて報じられることも多く、「名前は聞いたことがある」という方も少なくありません。 ですが、ARとVRにおける違いや、具体的な活用方法などを細かく説明できる方は少ないでしょう。昨今のAR・VRはさまざまなサービスやビジネスに活用されており、使い方次第で企業の業務効率や利益の向上につなげることも可能です。今回は、ARやVRについて知りたい方、また使い方を理解したい方へ向けて、両者の違いやできることなどを詳しく解説していきます。目次
AR・VRはそれぞれ何が違う?
名前が似通っているARとVRは、それぞれで仕組みや用途が大きく異なります。主な特徴や相違点は以下の通りです。AR・VRの違い | ||
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AR | VR | |
言葉の意味 | 拡張現実(Augmented Reality) | 仮想現実(Virtual Reality) |
どんな技術? | 現実世界をコンピューター処理によって 拡大・拡張させるための技術 | 現実世界の代わりとなるような世界を コンピューター処理で再現する技術 |
必要なデバイス | スマートフォンやタブレット端末 | 専用のヘッドセットやゴーグルなど |
没入感 | 使用するデバイスに左右されない | 使用するデバイスに左右される |
AR(拡張現実)とは
ARとは「拡張現実(Augmented Reality)」の略であり、「現実世界をコンピューター処理によって拡大・拡張させるための技術」です。端的にいえば、「カメラ越しの世界にCGを追加する技術」という認識でもよいでしょう。このARを用いることで、「現実世界+コンピューターグラフィック」によって現実世界では不可能な体験を提供できます。- カメラで撮影している風景に、アニメのキャラクターを追加して表示する
- 自宅風景に、3Dグラフィックで再現された家具を追加で配置する
- 星空に、今見ている方向にある星座を追加して表示する
今さら聞けないAR(拡張現実)とは?活用事例や今後の動向を解説!
VR(仮想現実)とは
VRとは「仮想現実(Virtual Reality)」の略であり、「現実世界の代わりとなるような世界をコンピューター処理によって再現して、ユーザーに体験してもらう技術」の総称です。昨今のSF映画やアニメなどの映像作品には、VRの世界を舞台としているものも多く、ARよりもイメージが想像しやすいでしょう。 ARが現実世界を基本としてコンピューター処理を行うのが特徴となっているのに対し、VRは「現実世界をコンピューター処理によって丸ごと書き換えてしまうような表現」が特徴となっています。ユーザーは現実世界のように再現された仮想の世界観で、世界の中を歩く、キャラクターに触れるといった体験が可能です。 近年ではコンポーネント(あらかじめ作成されたグラフィック)を用いながらVR世界を構築できるプラットフォームも登場し、スマートフォンやタブレットを使って簡単に無料コンテンツを楽しめるようにもなっています。VR導入のハードルは低くなってきているといってよいでしょう。 ちなみにVRにもARと同じように、頭の動きを感知する「3DoF」、頭だけでなく体全体の動きを感知する「6DoF」といった表現の違いがあります。このように、AR・VRは技術や名前こそ似通っているものの、表現方法や端末などに大きな違いがあるのです。ARとVRを融合したMR(複合現実)
この他、現代ではARとVRを融合したMR(Mixed Reality)と呼ばれる技術も登場しています。「現実世界にCGを映しだす」という特徴はARと同一ですが、MRは「VRのように専用のヘッドセットやゴーグルを装着する」という違いがあります。ヘッドセットやゴーグル越しにCGが投影されるため、現実世界でもVRのような仮想現実を体験できます。このMRはARやVRと比べて発展途上の技術ですが、教育機関や製造現場などさまざまな分野で活躍が期待される技術です。ARとVRの違いとは?
ここからはARとVRの違いを深堀りしていきます。没入感
没入感とは「何かの世界へ入り込んで自然と集中してしまう」状況を指します。ARやVRをはじめとするXR分野ではキーワードとなる存在です。没入感の点では、現実世界をコンピューター処理で丸ごと書き換えたうえで、現実のように知覚させる技術であるVRのほうがARより体験度が高いといえます。 また、頭の動きのみを検知して映像へ反映させる3DoFよりも、体ごと世界観に浸って活動ができる6DoFのほうが没入感は高くなるのもポイントです。映像の作り込みや何ができるか(対象物に触れる、刺激が実際に体へ反映される)といった点でも没入感は左右されるでしょう。対してARの場合は、現実世界に情報を追加してユーザーの体験を補助する役割を担います。現実世界を見ているのには変わりありませんから、没入感をあまり気にしないでよい技術です。端末
端末の点では、AR・VRともにスマートフォンやタブレットで楽しめるようになっているのは変わりありません。ただし、特にVRの場合、没入感をどこまで求めるかによって使うべき端末が変わってきます。- VR映像だけ簡単に楽しめればよい:スマートフォンとヘッドセットゴーグル
- VR映像への没入感をより高めたい:3DoF対応のVRヘッドセット
- VR映像へ体ごと浸りたい:6DoF対応のVRヘッドセット
ARの利用方法の事例
ARの活用事例 |
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現実世界にゲームキャラクターを表示させる |
顔写真や映像の加工を行う |
工場での作業員補助を担う |
大型家具や家電の配置のシミュレーションを行う |
現実世界にゲームキャラクターを表示させる
ARを使うと、現実世界をゲームの世界観と融合できます。ARを使った著名なゲームアプリといえば、2013年にリリースされた陣取りゲーム「Ingress(イングレス)」や、世界的なブームとなった「ポケモンGO」などが挙げられるでしょう。ARの技術を使ったゲームアプリは、現実世界の指定箇所へゲームのキャラクターを配置、会話をしたり戦ったりといったことが可能です。スマホゲームの中は、位置情報なども活用して、場所により出現するキャラクターを変更させるといった工夫も行っています。またチェーン店と協力して、アイテムがもらえるスポットを店内に追加するといった、現実世界とリンクをするサービスを展開しています。顔写真や映像の加工を行う
ARを利用すれば顔の映像をリアルタイムで認識して、コンピューター処理で加工するといったこともできます。顔画像の加工は、「SNSで自分の顔を加工した面白い写真を投稿して楽しみたい」といった場面で使われています。SNSによっては、写真画像の顔を加工して性別を変えてしまうARフィルターや、無表情の顔を笑顔に変換して加工するアプリもリリースされるほどです。工場での作業員補助を担う
この他、製造業における工場作業においても、ARの活用事例があります。例えば、専用のARグラスを装着した作業員に対し、「集荷情報」や「誤作動の検知および警告」を伝えたり、「技術者による遠隔での作業内容アドバイス」などを伝達したり、ARによって製造工程を円滑にする取り組みが行われています。このようなAR活用を行うことで、経験の少ない作業員でも、スムーズに作業を進める手助けとなるでしょう。結果的に作業効率や生産性の上昇といった効果を得られるようになります。大型家具や家電の配置のシミュレーションを行う
さらに、リフォームやインテリア業界においても、AR技術は活かされています。 例えば、ユーザーが「購入前に自宅やオフィスへ家具を置いて雰囲気やサイズを確認したい」と思っても、実物がなければ再現も困難です。特に大きな家具の場合は、たとえサンプル品が用意できても配置に手間がかかってしまいます。ARの場合、3Dグラフィックで家具を配置できるので、重量やサイズを気にしなくて済みます。仮想的に家具画像を自宅やオフィスへ配置しながら、インテリアに合うデザインなのか、といった点を細かく確認できるのです。また、サイズやカラーの変更も簡単にできます。VRの利用方法の事例
VRにおける利用方法の事例は、以下の通りです。VRの活用事例 |
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ゲームのキャラクターになりきって遊ぶ |
スポーツ観戦でのアバターを活用した交流をする |
研修コンテンツを使った学習ができる |
仮想空間にショップが開ける |
ゲームのキャラクターになりきって遊ぶ
ARだけに限らず、現代ではさまざまなVRゲームが登場して話題になっています。体の動きを反映させたリズムゲーム、自分の腕の動きが剣の動きに反映されるRPGゲーム、テニスプレイを仮想世界で楽しめるスポーツゲームといった没入感を活用したさまざまなジャンルのゲームが販売されています。現時点では没入感の高い体験にコストがかかってしまうので、広く普及しているとはいえません。ですが、将来的にVRのコスト問題が解消すれば、没入感の高いゲームが、より手軽に楽しめるようになるでしょう。スポーツ観戦でのアバターを活用した交流
スポーツ観戦にVRを活用する動きも広まりつつあります。例えば、野球の観戦において、遠隔の知人とも気軽にアバター(VR内で自分の代わりに動くキャラクター)を使って交流ができるシステムが活用されています。アバターにより表情だけでなく、身振り手振りまで細かく反映させて細やかなコミュニケーションを取れるのが特徴です。スポーツ体験を新しいものへと昇華させるカギとして、今後VRは、より重要な技術となっていくでしょう。研修コンテンツを使った学習
この他、VRは企業研修においても活用されています。例を挙げれば、従業員に仮想世界の中で店舗内での接客、溶接といった必要な作業を疑似体験してもらう、実体験と変わらない業務スキルを身につけてもらうことが可能です。疑似的ではありますが、現実世界での作業と同じような体験ができるので、従業員のスキル向上などに効果があります。また、いきなり体験させると危険な作業でも、シチュエーションを再現して、どう危ないのか疑似体験させながら学習へ活用できる点もメリットです。 この他にも、VRの技術を使えば、疑似的な店舗をVR空間に設けて商品販売を行うこともできます。バーチャルな商品紹介ができるようになれば、従来のネットショッピングではできない販促が可能となるでしょう。ARやVR技術の今後について
いくら革新的な技術といっても、ARやVRは「発展途上の技術」です。 例えば、ARやVRをよりリアルに体験するには、ヘッドセットやゴーグルのように視界全体を覆うデバイスが不可欠です。これらのデバイスは、国内外のメーカーが開発を手掛けていますが、「価格が高い」「実用性に乏しい」などの理由により、世間一般にはあまり浸透していません。AR・VR技術を使用したアプリ、技術を体験できるデバイスなどが普及すれば、ARやVRはより身近な存在になると予想されます。 また、昨今はユーザーの位置情報と属性で音楽・音声を再生する「AR音声」などの技術も誕生しています。これは、現実世界を拡張させるAR技術を応用したもので、美術館や観光地のように特定の場所で「多言語の音声ガイダンスを流す」といった使い方ができます。この他、オンライン上に構築された3Dの仮想空間を指す「メタバース」なども、ARやVRの発展を象徴する良い例でしょう。趣味やビジネスなど多彩な使い方が検討されていますが、現代では技術的な敷居が高く、普及にはまだ時間のかかる分野です。 その一方で、現代はARやVRを手軽に体験できるWeb AR・Web VRという技術が登場しています。このWeb AR・Web VRについては、以下の項で詳しく紹介します。アプリのインストール不要!Web AR・Web VRとは
最近では、従来基本だった専用ソフトウェアを介したAR・VRのコンテンツ提供だけでなく、Webブラウザを介したAR・VRの提供も広まっています。「Web AR・Web VR」と呼ばれるこの技術は、AR・VRの体験ハードルをさらに下げられる技術として注目されています。Web AR・Web VRには、- アプリのインストールが必要ない
- 機器へ依存しないので、対応Webブラウザさえあれば使える
- URLへのアクセスやQRコードスキャンなどで簡単に起動できる
アプリと異なり、使用にインターネット環境が必須ですが、専用環境のダウンロードが必要といったデメリットのある従来のAR・VRよりも共有や公開がしやすくなっています。