組織変革を成功に導くチェンジマネジメントとは?進め方や事例を解説 | AR制作ならメーカーパーク

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公開日 : 2022.06.24 最終更新日 : 2023.06.22

組織変革を成功に導くチェンジマネジメントとは?進め方や事例を解説

社会情勢や市場の変化が急速化する昨今において、企業を取り巻く環境は目まぐるしく変化してきています。こうした変化によって、これまで当たり前とされてきた考え方やマネジメントが通用しないケースも増えてきました。 企業が長く存続するためには、時代の変化に柔軟に対応することが欠かせません。その手法として注目されているのが「チェンジマネジメント」です。 チェンジマネジメントとは、組織の変革をスムーズに行うためのマネジメント手法です。社員が変化を受け入れられるように準備したり、環境を整備したり、変革の必要性を啓蒙したり、といった働きかけを行うことで、社員の反発を生むことなく組織変革を完遂できるという考え方です。 チェンジマネジメントを正しく取り入れることができれば、プロジェクトや事業の成功、組織の変革を効率的に実現することができます。 企業や組織の運営における課題を多く抱える方、壁にぶつかっている方は、ぜひチェンジマネジメントについて理解し、取り入れてみてください。

人間の心理面をサポートするのがチェンジマネジメント

前述の通り、チェンジマネジメントとは企業や組織の変革を効率よく実現させるためのマネジメント手法です。近年、社会情勢やビジネス環境の変化のスピードの速さに対応するための方法として、チェンジマネジメントは注目を集めています。 当然ながら、企業は時代の変化に合わせて組織の変革を行わなければ、持続的な成長はできません。しかし、組織の変化を実現する上で障害になるのが「人間の感情」です。 人は一般的に大きな変化を好まず、現状維持を望む傾向があります。こうした感情から、組織の変化に対して反発の声を上げる人も多くいます。 組織におけるこれらの感情を無視して変革を推し進めても、大きな成果を得ることは困難です。 また、変革を行おうにも、その意図や考えが末端の従業員まできちんと伝わらないケースも少なくありません。意図が伝わらないばかりに現場の従業員が変革に対して無理解だったり不満を持っていたりすると、組織変革の目的は達成されず、最終的に失敗に終わってしまうでしょう。 組織や企業を時代に合わせて変革させ、持続的に成長を促すためには、従業員の協力態勢を整える必要があるのです。こうした背景から、チェンジマネジメントは求められるようになりました。 個人が組織の変革を受け入れる体勢を整え、共感を得ながら効率的に進められるようにすることがチェンジマネジメントの目的です。チェンジマネジメントの活用ができれば、組織の改革をスピーディーかつ正確に進めることができ、ビジネス上の成果に繋げることができるのです。

チェンジマネジメントの分類は3種類

チェンジマネジメントの種類として、下記の3つが挙げられます。 上記3つの違いを理解し、それぞれに適したマネジメントを行うことが非常に重要です。

個人単位で行うチェンジマネジメント

まずは従業員個人に対して行うチェンジマネジメントについての解説です。個人の意識を変え、組織の変革に対して前向きに取り組むことを促すのがチェンジマネジメントの目的の1つです。 そのために、従業員1人1人に対して「いつ誰からどのような内容を伝えると良いか」「対象の従業員に、どのような伝え方を行うと効果的か」など、それぞれの従業員に合わせた計画を立て実行することが必要です。 個人へのチェンジマネジメントを行うことで、その人の考えや感情、立場に合わせた伝え方や対応ができます。結果的に従業員が個々に持つ変化への対抗感をやわらげ、業務における生産性やモチベーションの向上が期待できます。

プロジェクト単位で行うチェンジマネジメント

プロジェクト単位で行うチェンジマネジメントとは、プロジェクトに関わる一定数の従業員に対し変革を促すものです。プロジェクトを進める上で従業員にどのような取り組みを求めるのか、どのような技術や知識の習得が求められるかを見つけさせ、必要な変化を促していきます。プロジェクトは、リーダーシップを発揮しなければならない者、プロジェクトの成功に導くためのスキルを高めなければならない者などが協力し合って、初めて成功します。 プロジェクト単位でのチェンジマネジメントは、従業員に必要な変化への気づきを与えることが目的です。

組織全体に行うチェンジマネジメント

組織におけるチェンジマネジメントとは、個人レベルと並行して行う組織全体の変革を起こすマネジメントです。 もちろん、個人の 意識を変革させていくことも重要ですが、組織における制度、環境、ルールなどが整わない限りは、組織全体の変革は実現できません。 昨今は、組織を変革するためにツールを導入する企業も多く見られます。新しいテクノロジーを導入し業務のDX化が進めることで、成果の向上や効率化が期待できるのです。社会の変化に対応し柔軟に生産性を上げるためにも、今までのやり方を見直し、新しいツールの導入を検討するのも一手です。

8つのステップでチェンジマネジメントを進めよう

チェンジマネジメントは、主に下記の8つステップで進めていきます。 このチェンジマネジメントの進め方は、ハーバード大学ビジネススクールの名誉教授であるジョン・コッター氏が提唱した「変革の8段階プロセス」によるものです。ジョン・コッター氏は大規模な変革を促すために上記8つのステップを踏むことが重要だと提唱しました。この「8段階のプロセス」は現在、多くの企業で取り入れられています。

緊急課題であるという認識の徹底

チェンジマネジメントを行っていく上で最も重要なのは「緊急性の明確化」です。なぜなら組織の改革を行う際には、従業員が当事者意識を持たなければならないからです。当事者意識を持たなければ、危機感は生まれず、現状のままで良いという考えになってしまい、変革は進んでいきません。 そのためには、自社がこのまま変革なく進んでしまった場合、どのような危機が起こってしまうのかなどを従業員に理解させる必要があります。またこうした変革をチャンスと捉え、チャンスを掴まなければならないという危機感を生み出すことも大切です。 従業員に当事者意識を芽生えさせ、意識改革を促すことが最初のステップです。

変革を行うチームの結成

従業員の危機意識を高め、当事者意識を持たせた後は、組織の様々な部署の人材を集めて、変革をリードするチームを結成します。 組織全体の変革を促すため、このチームに求められる人材には「人脈」「信頼」「リーダーシップ」など、あらゆるスキルが必要です。またこのチームに所属している従業員には優劣をつけず、全員対等な関係を構築させることも大切です。 こうした変革を行うチームを結成することで、社内でモデルケースができるため、効率の良い変革が進んでいきます。

変革を行うビジョンの明確化

変革を行うために結成したチームは「ビジョンの明確化」を行います。ビジョンを描く際には、企業や組織が将来的にどうなりたいかを考えることが大切です。チェンジマネジメントを提唱しているコッター氏によれば、ビジョンを描くためには、下記の6点が重要であると挙げています。
  • 将来像を明確に可視化できるものか
  • 従業員、顧客、株主といったステークホルダーが変革に対して期待する長期的なメリットが得られるか
  • 現実的で実現可能な目標が策定されているか
  • 意思決定の方向性がはっきりしているか
  • 変化に対し、個々が柔軟に対応できるよう選択が許容がされているか
  • 5分以内に内容を簡潔に説明できるものか
定義されたビジョンに基づき、次のステップへと進めていきます。

ビジョンを組織全体で共有

明確化されたビジョンは組織全体で共有していきます。なぜこのビジョンなのか、どのような想いが込められているのかも合わせて伝えられると良いでしょう。 ビジョンは、一度発信したら終わりではありません。従業員に意識付けるためにも、何度も繰り返し発信を続けることが大切です。発信・共有の方法はオンラインやオフラインなど、様々な方法で行い、期待感を高めることも大切です。

変革を行うための環境整備

ビジョンの共有を行っても変革できる環境が整っていなければ、チェンジマネジメントが頓挫してしまいます。そのため、従業員が自発的に変革に向けて動くような環境整備を行う必要があります。 具体的には、下記のような環境整備があると良いでしょう。
  • 行動のリストアップ
  • 評価体制の整備
  • リーダーシップ教育
結成したチームが率先して変革に向けた行動を見せることで、従業員も具体的に行動するイメージを持ちやすくなります。また、行動をリストアップすることで具体化されるので、より効果が発揮されます。 変革に向けて、評価体制の整備も重要です。評価に直結する環境があれば、従業員は自発的に動くきっかけを得ることができます。

短期的な目標設定とその達成

変革には時間がかかるものです。ですから、より前向きに取り組んでもらうために、短期的な目標設定を掲げることも大切です。従業員が短期的な目標設定をクリアできれば、変革に前向きな姿勢で取り組むことができます。 例えば、目標を達成した従業員にボーナスが発生すると、従業員のモチベーションに弾みがつき、より改革を進めやすくなります。

さらなる変革の促進

短期的な目標の達成を積み重ねることで、より大きな変革を促すことが可能です。変革の目標を一度クリアしているため、変革に対しての抵抗感が少なくなり、より前向きに取り組むことに繋がります。 より変革を進めるために、更なる人材の投入や制度面の充実を図っていきます。

変革を推進する手法の定着

変革を行った結果を従業員に示すことで、新しく定めた制度や考え方などの定着を図ります。結成したチーム内のみならず、後継者の選定や教育などを行っていくと良いでしょう。 社内にしっかりと定着して初めて、変革が成功したことになります。

チェンジマネジメントを阻害する「チェンジモンスター」に注意

チェンジマネジメントが抵抗なくスムーズに進むことは、非常に稀です。なぜなら、組織や企業の中には変革に対抗する勢力がいるからです。ボストンコンサルティンググループのコンサルタント、ジーニー・ダック氏は、こうした抵抗勢力をチェンジマネジメントの阻害要因として「チェンジモンスター」と表現しました。阻害要因は下記の4種類に分けられます。

タコツボドン

タコツボドンは現在の組織内の役割に止まり、関与を激しく拒絶する人を指します。 「今のやり方でこれまでやってきた」など、変化に対して強情に拒否します。

ウチムキング

ウチムキングとは、組織内や企業内での評価に目が行き、社会情勢の変化に無関心な人を指します。 市場ニーズの把握などの努力も行わないため、変化への重要性が理解できず、反発する傾向にあります。

ノラクラ

ノラクラとは、口だけは達者で実際に行動をしない人を指します。行動しない理由ばかりを考え、できないと発言することが多いのが特徴です。ノラクラはその人はもちろんのこと、周りにも影響を与えてしまうことが多いため、早めに対処が必要です。

カイケツゼロ

カイケツゼロとは、評論家のように組織や企業の問題点に対しては声高に指摘するものの、自身では解決する努力を行わない人を指します。ノラクラと同様、口は達者ですが行動が伴わないため、根本的な問題解決には繋がりません。

チェンジマネジメントの(成功)事例

抵抗勢力に対処し、チェンジマネジメントを成功させた事例を2つご紹介します。 いずれも国内外の大手企業における事例です。

Google

Googleのサービスは、Google Cloudというクラウドサービスを活用して提供されています。Google社でも、GoogleカレンダーやGMailなどの自社サービスをGoogle Cloudで使用しています。 従来、Google社は社内インフラをクラウドで扱っていませんでした。クラウドサービスの利用へ変革するために、従業員に対して「分かりやすい説明」を繰り返すことで、チェンジマネジメントを行なってきました。具体的には「なぜ変革を行うのか」「変革を行うことで、組織はどのような姿になるのか」「従業員にはどのようなメリットがあるのか」などです。 結果、従業員から社内インフラ変革への不満は減少し、クラウドサービスでの業務移行を成功させました。

富士フイルム

富士フイルムは「第2創業」と銘を打ち、課長クラス1,200人を対象にチェンジマネジメントプログラム(CMP)を実施しました。富士フイルムがCMPを行った背景として、市場やニーズの変化により従来のリーダー像が通用しなくなったという実態があります。時代に対応できる新しいリーダー像を構築するため、研修を実施しました。「チーム全体での課題解決を意識した」「リーダーの姿勢を改めてイメージできた」など、一定の成果を上げることが出来たと報告されています。

意識だけではなく仕組みやルールを変えることが重要

組織の変化を促すことは容易なことではありません。しかし、変化に柔軟に対応できない企業は時代の波に淘汰されてしまいます。そうならないためにも、チェンジマネジメントは重要な手法であると言えるでしょう。 意識を変えるには、仕組みやルールを変える、新しいシステムやツールを導入するなど、具体的な変更もセットでなければなりません。 チェンジマネジメントの考え方と合わせて効率的な組織の変革を実現しましょう。
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